Bird Blue




 両手を広げて、道路に敷かれた、白いラインから足を踏み外さぬよう、歩く。道路と歩道を分かつ、ただの白い塗りに過ぎない。都会なら、ちゃんとした歩行者通路があるんだろう、だけどここにはなかった。神奈川の、田舎だ。
「ねぇ」
 前を歩く人は、全然喋らない。テニスラケットを刺したスポーツバッグを提げて、むっつりと。
「ねえ、ね」
 赤也は気にしない。いつもだからだ。道のりが一緒の分だけ、歩いているだけなのだ。あんまりにも、優しくない。
 むしろ、苦手意識を持たれている。知っている。
 嫌われてるの、かもしれない。
 赤也は考えない。
 赤也は心を塞ぐ。
 それじゃあんまりにも、哀しいでしょ。わかりたくないよ。
「鳥って押さえつけたことある?」
 赤也は言った。独り言の調子だ。人の話を、聞き入れない声だった。
「飛ぼうとしてる。逃げてる。上から。ぎゅーっと」
 相手の真っ直ぐな首筋を見ている。日に焼けた色だ。シャツとの境目が微妙な焼け加減。
「どうなるか知ってる?」
 赤也の両手は緩く握られる。
「びくんびくんする」
 赤也は迷うように視線を斜め上に動かす。
「ばたばたすんの。羽の根っこのとこが動くの、そこって、熱い感じがする」
 神社の鳩だった。集団で飛んでいる、まるい体つきの鳩たち。中に一羽だけ羽色の違う、鳩がいた。黒い身体なのに羽だけが白い。パイドと呼ばれる種類だが、赤也は知らなかった。今でも知らない。
「ぐっ、ぐっ、って、動くんだ」
赤也は喋り続ける。
 空間を埋める。音の重なりだ。壊れ続けろ。
「だからまた押さえんの。じっとしてれば、そーなればゆるくしてやろーとか思ってんのに、ぜんぜんそうなんねえの。もームカついちゃってさぁ」
 緩い坂を上りきって、共産党のポスターが貼ってある町の掲示板が見えた。
 そこを、赤也は右に曲がる。
 前の人にも曲がって欲しいと思う。
「ぎゅーって押さえたの、あ、鳥は、パンで捕まえた。購買で買ったやつ、焼きそばパンの端っこ。そば入ってないとこって、まずいから嫌いだし」
 掲示板に近づき続ける。
 お別れだ。
 赤也はひそって、言う。
「ね、鳩の」
 赤也は言う。
「続き、聞きたい?」
 真田は、横を見て、言った。
「いや、聞きたくない」
 赤也と視線を合わせ、答える。
「そか。じゃー、副部長、バイバイ」


 このひとの気を、なんだってこんなに引きたいんだろう。
 ばかみたい。
 どんなおはなしをとちゅうでやめたら、こっちにきてくれる?





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